貴族社会が終末を迎えようとしていた18世紀末のヨーロッパ。
恋の迷宮に迷い込んだ男と女が、本当の愛と幸せを求めてくりひろげる喜歌劇。
心が浮き立つような、あの有名な序曲に始まり、珠玉のアリアが次々と登場する、モーツァルトの代表的なオペラ。
指揮の巨匠カール・ベームは、モーツァルトをもっとも得意とし、交響曲全集と主要なオペラのほとんどを録音するなど、その演奏は定評がある。
音楽界の天才児W・A・モーツァルトが書いた数多くのオペラの中でも、もっとも有名なものとして世界中で親しまれる作品。原作はボーマルシェによる三部からなる戯曲「セビリャの理髪師」「フィガロの結婚」「罪ある母」の二作目で、「セビリャの理髪師」は後にロッシーニによってオペラになっている。登場人物も多く、筋も込み入ってはいるが、さまざまな形の重唱やアリアに彩られた名作。
このオペラ映画『フィガロの結婚』は、1976年にロンドンのスタジオで制作されているが、演出はザルツブルグ音楽祭で上演された舞台を根底にしながら、舞台ではなしえない、映像ならではの効果を縦横に駆使してる。演出はフランスを代表するオペラ演出家のジャン=ピェール・ポネル。
ペーパーナイフで楽譜を破るところから始まる序曲をバックに、フィガロが部屋を片付けている冒頭、モンテスキューやヴォルテールの著書、その上の理髪道具、古い手紙や伯爵の若き日の肖像、そしてその裏に書いてあるロジ-ナ(現夫人)と結婚できたことに対するフィガロへの感謝の言葉、そして、フィガロがギターを手にして出てくが、この部分で『フィガロの結婚』が『セビリャの理髪師』の後日談であるだけでなく、彼が新しい思想書を読んでいて、単なる召使いや理髪師ではないことをわからせてくれる。
アリアやアンサンブルで、登場人物がそれぞれの心理を表現するとき、実際に歌っているのに口を動かさず、表情を極端にクローズアップしたり、あるいはフラッシュバックを使い、対比映像によって相反する心の動きを描くなど、効果的な演出している。また、白と黒の色調を生かした、リアルな装置や小道具など、さすが舞台美術出身のポネルによって細かい部分にまで神経がゆき届いている。
ポネルの演出はベーム指揮のモーツァルトの音楽と完全に融合し、新旧の名歌手を揃えたキャスティングは絶妙。オペラ歌手の歌のうまさだけでなく、演技のうまさにも感嘆させられる。
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