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アニメーション映画/賢治のトランク
 

 

【ものがたり】
長い演奏旅行を終えたゴーシュは、子どもたちの待つわが家に急ぎます。ノルデとネネムの二人の子どもは、お土産を楽しみにしていました。ところがトランクの中にはお土産のかわりにたくさんのお話が入っていました。イーハトーブの停車場で男とぶつかってトランクを取り替えてしまったのです。
「ねえ、ねえどんなお話なの?」「パパ読んで、読んで」しかたなくゴーシュはトランクの一番上に乗っていた「氷河ねずみの毛皮」を読みはじめました。
『吹雪の夜、イーハトーブの駅から北の果てのベーリングへ向かう最大急行・夜行列車が出発しました。乗客の中には豪商のタイチ、船乗りの若者、それにキツネによく似た赤顔の男などがいます―』一方、ゴーシュとトランクを間違えた男の人も、「きっとこれは子どもたちのお土産に違いない。……」とつぶやきました。
ゴーシュの家ではノルデとネネムはお話を眼を輝かして聞いていました。読み終わると「次のお話は」「もっと、もっと」とせがみます。
そして次には「猫の事務所」を読みはじめました。『軽鉄鉄道の停車場の近くに猫の第六事務所がありました。ここは主に、猫の歴史と地理をしらべるところでした。こつこつと肩を叩く音――。
ネネムはいつのまにかノルデのとなりに座っています。「もうひとつだけどうだろう、お星さまのお話だよ」ゴーシュは「双子の星」を読みはじめました。星が輝く夜空に響きわたる歌声、そして銀笛の音色――天の川に西にある水晶のお宮で、双子の星、チュンセとポウセが星めぐりの歌に合わせて銀笛を吹いています。泉の水を飲みにオオガラスと嫌われもののサソリもやって来る。二人はけんかになります。』
ゴーシュが読み終わったちょうどその時、玄関のチャイムがなりました。ドアを開けますと、そこにはゴーシュがぶつかった男の人が立っていました……。
その男の人こそ、宮沢賢治だったのです……。

【かいせつ】
宮沢賢治が生涯を通じて人々に訴え続けた、「心のやさしさと命を大切にする」というテーマは、「心の荒廃」が叫ばれている現代社会のなかで、ひときわ光を放ち、私たちのこころに迫ってきます。
この映画は、賢治の代表的な童話「氷河ねずみの毛皮」「猫の事務所」「双子の星」の3作品をそれぞれ日本を代表するアニメーション監督が制作し、さらに、総監督が、宮沢賢治とセロ弾きのゴーシュを主人公とした物語りを用いて一本化するという手法をとっています。
宮沢賢治生誕100年を迎え、改めて「賢治の世 界」が見直されている今、この映画に対して大きな期待が寄せられています。また、賢治の声を岩手県出身の歌手・新沼謙治が演じることも話題のひとつです。
全編に流れる美しい音楽と共に、賢治のトランクに詰められた星粒のごとくきらめく小さなお話が、ご覧いただいた方々の心の中に、銀河のように広がることをお約束いたします。

文部省選定 カラー・スタンダード・85分

 

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