ヴェルディの中期三大傑作のひとつに数えられるこのオペラは、ヴィクトル・ユゴーの「逸楽の王」が原作になっています。当時のフランス王をモデルにした実話として物議を醸し、初演の翌日に上演禁止となりました。ヴェルディがオペラ化するに当たっても、舞台をフランスからイタリアに移し、架空の貴族の話に変えて検閲をクリアしました。このオペラは大成功し、ヴェルディ中期の傑作となり、ヴェルディは大作曲家の地位を得ることとなりました。
ヴェルディは、この『リゴレット』という女性、誘拐、殺人と、かなり異色のドラマをオペラ化しました。この台本の巧みな心理描写を音楽で再現できると感たのでしょうか。主役陣もソプラノ、メゾ・ソプラノ、テノール、バリトン、バスがバランスよく配置されており、効果的な音楽づくりとなっています。特に四重唱「美しい恋の乙女よ」は、オペラ史上、最高の四重唱と言われています。
『リゴレット』には「悪魔め、鬼め」や、ジルダのアリア「慕わしい人の名は」など有名なアリアがあります。マントヴァ公爵の歌うアリア「女心の歌」は有名で、このメロディーが初演前に流行ることを恐れた作曲者ヴェルディは、リハーサルまでこの曲の楽譜を歌手に渡さなかったというエピソードも残っています。三大テノールのパヴァッロティが歌う「女心の歌」は必見です。
バリトンというと悪役や脇役が多い音域ですが、『リゴレット』はバリトンが主役という珍しいオペラです。ヴェルディのオペラで主役を十分果たせるバリトンをヴェルディ・バリトンと言い、バリトン歌手にとってひとつのステイタスであり、名誉にもなっています。このリゴレットはバリトンの存在意義を世に知らしめた作品といっても過言ではないだろう。しかし、同時に人を惹きつけるだけの魅力や実力を持っていないと演ずることの出来ない作品だとも言えます。
|